モンテッソーリ教育という言葉を聞いたことはあっても、具体的な内容までご存じの方は少ないのではないでしょうか?
聞きなれない言葉の響きで何となく敬遠してしまうかもしれませんが、モンテッソーリ教育は100年以上も世界で支持され続けている教育法の1つです。
この記事では、モンテッソーリ教育とは何か、考え方や教育内容を紹介します。
家庭でできる実践方法も紹介しますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育とは、子どもには自己教育力が備わっているとして、子どもが自分で育つ力をサポートする教育法です。
イタリアの医師で教育家でもあった、マリア・モンテッソーリ博士によって考案されました。
歩き方を教えなくても、子どもは環境に適応しようとして自然と歩けるようになります。
子どもが本来持っている力を引き出すために、自由に発揮できる環境を整えてあげれば子どもは自発的に試行錯誤しながら成長します。
重要なのは、子どもが自分で考えて、自分から進んで学ぼうとする姿勢です。
大人には子どものしたいこと・できることを把握して、自由にできる環境を整える援助をする役割があります。
モンテッソーリ教育の考え方とは?
モンテッソーリ教育では、子どもには大人から教わらなくても自分で学び、自分を育てる力があると考えられています。
子どもの自己教育力を育てるには、大人が手取り足取り教えるのではなく、自分でやってみて身につける経験が大切です。
子どもが力を発揮するためには、子どもの発達段階に合わせた環境を用意する必要があります。
言語や運動など、特定の事柄に対して吸収する能力が高まる時期を敏感期としており、敏感期の種類に応じて適切なサポートをおこなうのが重要です。
敏感期の子どもは同じような動作を繰り返しおこなうため、大人にはいたずらに見えるケースもあります。
敏感期特有の行動の意味を知っていれば、それに合わせたサポートができるでしょう。
子どもが主体的に行動できるように、注意をするときは理由を伝え、自分で判断する力を養います。
ほめるときは結果ではなく過程を評価してあげるのが子どもの自信になり、主体的な行動につながるポイントです。
モンテッソーリ教育の教育内容
モンテッソーリ教育では、乳幼児期の発達段階によって、前期(0歳~3歳まで)と後期(3歳~6歳まで)に分けています。
前期・後期それぞれの時期に合わせた教育分野がありますが、ここでは意識が芽生える時期とされる後期の教育内容を紹介します。
日常生活の練習
お子さんが大人の真似をしてみせることはありませんか?
日常生活の練習とは、子どもが大人の真似をする時期に合わせて、自分の身体を思いどおりにコントロールできる能力を身につける練習です。
子どもはできないのではなく、やり方を知らないだけとして、正しいやり方を示します。
子どもが使いやすいようにサイズを調整した道具を用意するなど、環境を整えるのが大人の役割です。
コップに水を注いだり、ボタンを留めたりして、実生活に基づいた行動で身体の使い方を学習します。
感覚教育
3歳を過ぎる頃には感覚器官が発達し、さまざまな刺激に対して敏感に反応するようになるでしょう。
小さな音を聞き取ったり、微妙な味や匂いの違いがわかったりと、自分の周りの環境を把握できるようになります。
五感を使う練習によって、さらに詳細な情報を得る能力を身につけ、知的活動の基礎を築く教育です。
色や形、大きさの違いが視覚や触覚でわかる教具を使って、自然に感覚器官の発達を促します。
言語教育
言語教育は、子どもの興味関心や発達段階に合わせた活動を通して言葉を獲得できるように促す教育です。
子どもは言語の敏感期に周りで話されている言葉を母国語として覚え、いくつものステップを踏んで語彙を増やしていきます。
段階的に、話し言葉や書き言葉、文法まで自然に習得が可能です。
絵や文字のカードなどの教具を使ううちに、言葉に関する能力が備わるような工夫がされています。
算数教育
数の敏感期に数に関する教具があれば、子どもは教具を通して数を身につけられます。
実際に触れて感覚的に数量を覚えるのに有効なのは、棒やビーズなどの具体的に数を表せる教具です。
段階的に用意された教具で、数詞や数字も体験的に理解できる仕組みになっています。
実体験によって獲得した数の概念は、その後の抽象的な考え方へ無理なく導いてくれるでしょう。
文化教育
文化教育は、数と言語を除いた幅広い分野の総合的な教育で、小学校での理科や社会に相当する分野を学びます。
子どもから「なぜ」「どうして」と質問攻めにあったことはありませんか?
モンテッソーリ教育では、その質問の答えにたどり着く過程を重視しています。
子どもの知りたい欲求に応えて、興味の範囲を広げるのが目的です。
家庭でおこなえるモンテッソーリ教育
教育内容や考え方に興味はあっても、実践している教育機関にいきなり通わせるのにはためらいがある方も多いでしょう。
まずは、家庭で手軽にできる方法を試してみてはいかがでしょうか。
モンテッソーリ教育では、子どもの作業や活動をお仕事と呼んでいます。
身の回りにあるものや、自分で作れる教具を使ってできるお仕事を紹介するので、子どもと楽しみながら取り入れてみてください。
あけ移し
あけ移しとは、容器から容器へ、水や豆などの中身を移し替えるお仕事です。
用意するものの例を表にしました。
容器 | ピッチャー・計量カップ・ボウルなど |
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中身 | 水・豆・フェルトボールなど |
あけ移す道具 | スプーン・トングなど |
容器の重さや中身は、お子さんの発達段階に合わせて選んでください。
水を移し替えるときに容器にラインを引いて量を指定したり、フェルトボールの色を分けたり、難易度を調整できます。
移し替えるのに、最初は指を使い、スプーンやトングにステップアップしていくとよいでしょう。
あけ移しでは、身体のコントロールや、家事ができるようになる練習ができます。
縫いさし
縫いさしとは、針を使って縫い物をするお仕事です。
小さな子どもに針を使わせるのは危ないと心配する方もいるでしょう。
最初は先が丸まった針で、穴を開けた紙を縫うところから始めます。
用意するものは以下のとおりです。
- とじ針(先のとがっていない毛糸用)
- 毛糸・刺繍糸
- 目打ち
- コルクの鍋敷き
紙に描いた線や絵に沿って穴をあける目印の点をつけたあと、お子さんが目打ちで穴を開けます。
机が傷つかないように紙の下にコルクの鍋敷きを敷いて、危険のないように作業を見守ってあげましょう。
目打ちで開けた穴に、糸をつけた針を通して縫っていきます。
手先を器用に使う練習になり、集中力も身につくお仕事です。
絵カード合わせ
絵カード合わせのお仕事は、言語教育のはじめの一歩となり、文化教育にもつながります。
語彙力を伸ばし、形の同一性や文字の存在を自然に学べるお仕事です。
カードの種類は以下のとおりです。
- 絵だけのカード
- 絵と文字がセットになったカード
- 文字だけのカード
最初は、絵だけのカードを使って、名前を確認しながら同じ絵のカードを並べます。
次の段階でおこなうのは、絵と文字がセットになっているカードを使う作業です。
絵と文字がセットになったカードを並べて、絵だけのカードから同じ絵を選んだあとで、文字だけのカードを合わせます。
さらに次の段階では、絵に対する説明文のカードを加えるのもよいでしょう。
カードは市販されているものもあるので、購入すれば手軽に始められます。
お子さんの好みにあわせて、一緒に手作りするのもおすすめです。
子どもが自分で育つ力を伸ばすモンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育では、子どもには自分で学んで成長する能力が備わっており、それを発揮できる環境を整えるのが大人の役割とされています。
大人がやらせるのではなく、子どもが自分からやりたいと思い、実際にやってみて吸収する過程が大切です。
子どもの発達段階に合った働きかけをおこない、大人の手を借りなくても自分でできる環境を整えてあげましょう。
興味を持った方は、この記事で紹介した家庭でできる方法を子どもと一緒に試してみてください。